演出『中野志保の語り部屋』

今回の公演では、初めて「書記制度」を導入している。

毎回練習の時には「書記」を1人指名し、練習の記録を取る。その日練習に参加できなかった人も内容を確認できるように、常に共有しよう、というものだ。

当然練習を主導している私の話した内容がメインになってくるのだけれど、実のところ私自身、演出メモを残すことが全くできてない。

そんな中野にとっても、大変にありがたい制度となっている。

断っておくと、頑張ろうとはしているのです。

ただ、何度かノート書き留めようとしたのだが、急いで走り書きするため、後から読んでも何のことだか分からない。
台本への書き込みは多いのだけど、囲み線と取り消し線と、大量の矢印があるだけで日本語の表記が極端に少ない。おまけに「今、どの線を足したのか」を一瞬で忘れるので、いつのメモなのか分からない。

練習6、7回目を終えた今日、改めて自分の台本を見直してみた。

...

「電話?」「含ませ」「へいへい」「どう聞くか?佳代との路(←多分「距離」と書こうとして力尽きた)」

...

とまあこんな具合である。


ところで、本作品「マリオネットに花束を」に出てくるキーワードの1つに、
「忘れること」がある。

忘れることについて演劇は深く結びついている。舞台上で起こったすべては、写真や映像には残っても、その空気や感動はいつか必ず薄れていく。練習も本番も等しく、積み重なる日常の中に埋もれていってしまう。

それでも、何かひとつでも残そうと私たちは声を上げ、身体を動かし、メモを取りつづける。走り書きの「へいへい」が、きっと何かを残すための糧になってくれると信じている。

そんなわけで今日も私は、みんなの力を借りながら、頑張って手を動かすのである。

この3か月で集まった練習記録で出来上がる演劇作品が、少しでも長くみんなの記憶に残ることを願う。

以上、演出・中野志保でした。

ユニット・ピコ 学生de企画公演「マリオネットに花束を」

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